三島由紀夫「百万円煎餅」

 おばさんとの約束にはもう少し時間がある。健造と清子はデパートに入った。ずっと質素に暮らしてきた彼ら夫婦は、あらゆることに慎重だった。しっかりと貯金し、計画を立てて将来を見据えていた。そのとき、オモチャの空飛ぶ円盤が宙を飛び、「百万円煎餅」の上に落ちた。この縁起のよさに、彼らは小さな奮発をする。

花ざかりの森・憂国―自選短編集 (新潮文庫)

花ざかりの森・憂国―自選短編集 (新潮文庫)

 読みやすい文章で書かれています。夢を信じる若い二人の、無邪気でロマンティックな様子がほほえましく描かれます。彼らの行動を追った作者の眼は微笑みにあふれています。ただ、ラストのインパクトにより、それらは薄れてしまいがちですが・・・。ところで、そのラスト、おばさんはいったい彼らに何の話をしたのでしょう?それは読んでのお楽しみということで。