井上靖「闘牛」
大スタンドの中央で行われる競技、乱れとぶ札束、どよめく観衆・・・闘牛大会のプランを聞いたとき、新聞局長・津上の頭の中ではこれらの情景が自然に浮かんだ。だが、直前まで起こるトラブルの数々は心配の種をつきさせない。そんな中、津上の背中を見ながら、さき子の頭に稲妻のように閃く思い。(ああ、あの人は失敗する!)――闘牛大会まで、あと10日。果たして勝つのは誰だ。
- 作者: 井上靖
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1950/12/04
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その中で浮かんでくるのは、何がどのような状況に陥っても、誰がどのような感情に陥っても、決して止まらずに着実に進み続ける「時間」というものの存在です。そして、金で動かされながらも人間の時間にはまどわされず、必死で戦っているのであろう牛の姿も。
「あなたの夢中になりそうなお仕事だわ」(略)
「なぜ?」
「なぜって、そんな気がするの。あなたきっと夢中になんなすってよ。あなたにはそんな処があるの」