佐木隆三「ジャンケンポン協定」

 労使の妥協案として実施される「ジャンケンポン協定」。初の紳士協定といわれるそれは、ジャンケンに勝った方が会社に残り、負けた方がリストラされるというものである。・・・最後尾についた彼の計算によれば、出番までには三時間半ほどある。列のあちこちでは、オープン戦が始まった。だが、小冊子を持っていた彼は余裕を見せていた。その本のタイトルは、「ジャンケンポン必勝法」。

 アイデア抜群。ジャンケンでリストラを決定するという方法は、公平か不公平かという意味では、まったく公平に違いありません。けれども、これが成立する会社の「社員」とは、いったい何なのか。もはや人間ではなく、歯車AやBやC・・・。
 先の見通しを見誤った責任を人員削減により行う会社と、協調性という名の没個性を大切にする日本型サラリーマン。そういった日本的構造に対するブラックユーモアは強烈です。
 会話がほとんどを占める読みやすい話ですが、さりげないほど絶妙に、いくつかの「事件」が絡んでいきます。そうして最後の最後に発見された、ジャンケンポンの秘術とは!?

 ――光栄あるジャンケンポン協定バンザイ。会社バンザイ。組合バンザイ。では、開始致します。