武田泰淳「ひかりごけ」
投げやりに眺めやったさきの一角でだけ見える「ひかりごけ」。これを見学した私たちは村へもどり、校長の話を聞きました。遭難しかけた話、登山の苦労、人肉を食べた男の話・・・人肉を食べた?私の作家としての感覚が、この話に引き寄せられたのを感じました。読者に歓迎されそうにない題材に文学的表現を与えるため、後半は「読む戯曲」が開幕。
- 作者: 武田泰淳
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1964/01/28
- メディア: 文庫
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それは「なぜ食べてはいけないのか」から、「なぜ食べざるを得なかったのか」へとカーブしていきます。意志の固い人間が決意して行った行為は、それに対する批判にも「我慢」することでしょう。極限状況における人間心理の洞察に、前半で語られた「ひかりごけ」が絶妙に絡んできます。センスのいい話です。