織田作之助「ニコ狆先生」

 私はこのたび感ずるところあってニコ狆先生の門弟となった。ニコ狆先生またの名を狆クシャといい、甲賀流忍術の達人である。先生の顔は犬の狆がクシャミをするときによく似ている。先生の妙齢のご令嬢、美しい、美し過ぎる千代子さんとは、トンビと鷹の親子である。先生は忍術の達人なので、ずっと向こうで蚤が跳んでも判るし、先生についての悪口もどんどん聞こえてくるのである。


 駄洒落の洪水に見舞われる珍品です。深みも何もあったものではありませんが、短い話ですし、作者・織田作之助が発するスピードを体感するにはうってつけの作品でしょう。実際にオダサクはものすごい喫煙家で、1日100本を吸っていたとかいなかったとかで、それに関する自虐的ギャグが後半にあります。

 笑ってはいけない。私はヤブ睨みである。このたび感ずるところあってニコ狆先生の門弟となった。ニコ狆先生またの名を狆クシャといい、甲賀流忍術の達人である。