松本清張「石の骨」
三十年近い昔のこと、地方の中学校に奉職していた己は、学界の定説を完全に覆す発見をした。しかし、これが学会に黙殺され、名誉教授から「田舎の教師風情が知ったかぶりをしおって」と否定されようなどとは思わなかった。以来、己は周囲が与える屈辱、不信、嘲笑のなかで、一人で生きてきたのである。決して信念を捨てることなく、しかし誰にも認められないことに対する索漠とした寂寥を持って・・・。
- 作者: 松本清張
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1965/06/30
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それが出来ない研究者はどのような成果を出していようとも、精神が二流三流。真実の追究という本質を見失い、学問の進歩を止める利己的な人種に過ぎません。
どれほどの反対にあおうとも己の信念を捨てない主人公には、世界を相手に同じ道を歩く者として、激しく共感するものがありました。道を切り開こうとする者の苦しみは、その立場にいる者にしか判りません。
「おれは学閥の恩恵もなく、一人の味方もない。周囲は敵だらけだ。おれが学問の世界に生きていくには、こうしなければならぬのだ」