松本清張「赤いくじ」
純情で嫉妬深い楠田参謀長と、町医者出身でかつて女にでたらめだった末森高級軍医は、この朝鮮の平和な町で塚西夫人の心を得ようと争っていた。夫人は二人に、平等に接しているようだった。化粧の濃淡も笑い声の回数も、全く同じように見えた。二人の競争は激しくなったが、同時に夫人の美貌もいよいよ高貴になっていった。それは参謀長はともかく、軍医にすら野卑な考えを抱かせないほどだった。
- 作者: 松本清張
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1965/06/30
- メディア: 文庫
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