吉行淳之介「娼婦の部屋」
秋子は娼婦だった。その体と会話するとき、彼女のさまざまな言葉が私の体へと伝わってきた。この平衡は長くは続かず、いつしか私は彼女の不在をさびしがるようになった。私の下で秋子が既に疲れていることがあり、そのときの気持は、そのまま嫉妬につながった。「俺のときよりも疲れたのか」。秋子はあいまいな笑みを浮べたまま、黙っていた。
- 作者: 吉行淳之介
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1966/11/14
- メディア: 文庫
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「俺の時よりも疲れたのか。」
秋子は、相変らずあいまいな笑を浮べたまま、黙っていた。