石上玄一郎「日食」

 人間が光合成能力を持つことが出来たならば、これは食糧問題に起因するあらゆる戦争を終結させるだろう。偉大な思想であり、未来に説かれる新たな産業革命である!――この思想故に、峯生は例の秘密結社から狙われてきた。だが、この戦いも明日で終わりだ。彼等は黒い翼で太陽を覆い隠そうとするだろう。自分はそのとき、全世界の悪鬼どもと戦うのだ。


 天使と俗物、宗教と戦争、過去・現在そして未来・・・これらをクロスさせた預言者・峯生の行き着く先は?カオスな雰囲気が充満する中で、どことなくユーモアを漂わせた孤独な戦いが行われます。
 主人公の精神が形作られた原因についての描写(戦地での出来事と人間関係)と、現在進行形の「戦い」が同じ分量で描かれていて、彼の人生の太さと直っすぐさが強調された小説です。

 「僕はお前達が考えているように病人ではない。病める者は僕ではなく、この二十世紀だ。」