山本周五郎「よじょう」

 「斬られて死んで、おやじは本当に、これで満足だっていったのかい。相手が宮本武蔵だかなんだか知らねえが・・・」。そのうち橋のそばに新しく小屋が出来、ここに勘当された岩太が住み始めた。世間から見捨てられた不良の行着いた先である。ところが監視の役人にとがめられたとき以来、彼の身にわけのわからないことが立て続けに起こったのである。

愛蔵決定版山本周五郎全集 (第24巻) よじょう わたくしです物語

愛蔵決定版山本周五郎全集 (第24巻) よじょう わたくしです物語

 悔悛しないシンプルな人物のみが登場するので、分かりやすく読みやすく、そのぶん、ストーリー展開の妙といったものにたいして、素直に引き付けられるものがあります。「主観」と「客観」がぐるぐる入れ替わる面白さは魅力です。