太宰治「新樹の言葉」
がぶがぶのんで、寝ていたら、宿の女中に起こされた。乳母の子供の幸吉さんが、わざわざ訪ねてきてくれたのである。ああ、これはいい青年だ。私にはわかるのである。ただ、大変ひさしぶりに会ったのに、ごろごろしているところを見られて、恥ずかしかった。だが、不思議と、なんの不安もない。幸吉さんは「今夜はね、計画があるのですよ」と食事に誘ってくれた。
- 作者: 太宰治
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1982/07/27
- メディア: 文庫
- 購入: 2人 クリック: 4回
- この商品を含むブログ (26件) を見る
不幸にがんじがらめになりながらも、何とか脱出しようとする必死の姿が見える、太宰治中期の佳作。ほのかに明るく、感傷の敗北、幸福感の大勝利。疲れた人に呼んでもらいたい、とても前向きな作品です。