深沢七郎「因果物語―巷説・武田信玄」
武田信玄は三百五十年も前に死んだ人なのである。けれども甲斐の国の百姓たちにとっては、今でも立派な人といえば信玄公よりほかにいないし、偉い人というのも信玄公よりほかにはないのである。水騒動や税法の一件のときも、村人にとっての「シンゲンコー」の威力、というより信頼する様子はすごいのである。そしてここでは演劇、旅芝居となって伝わっている信玄公を記すのである。
- 作者: 深沢七郎
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 1978/04/10
- メディア: 文庫
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伝承された物語は、1つしかないと思われる真実を探る歴史家にとってはジャマなものかもしれませんが、理想化された伝説には、その土地で生きる人々の想いがこめられています。真実の追究よりもロマンを大切にすることが、作者の気持ちとして作品に込められているように感じました。そして作品から浮かぶのは、村民たちの実直な姿。彼らを中心とした後半の「旅芝居」は、至極あっさりと書かれているのですが、とても面白そうでした。
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