坂口安吾「イノチガケ」
信長に保護され、秀吉に蹴落とされ、家康に止めを刺され、切支丹は完全に国禁された。海外からは情熱を抱いて浸入する宣教師が絶えなかったが、遊ぶ子供の情熱に似た幕府の単調さは、彼らの迫害を行い続けた。火あぶり、氷責、斬首、穴つるし、島原の乱、鎖国の施行。一七〇三年にヨワン・シローテがゼノア港を旅立ったとき、日本切支丹は既に全滅していた。
- 作者: 坂口安吾,川村湊
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1989/10/04
- メディア: 文庫
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人々に多く感動を与えたのは、死を目前にしたときの彼らの意志の強さです。人間が自らの本当の感情に気づくのは、他の人間がとても大変な目にあったとき。そのときの対処法を目の当たりにすることによって、見ず知らずの他人の場合は同情や憐憫などが、知っている人の場合は友情や愛などが生まれます。宣教師たちのバックボーンたる理屈を超えた意志の力は(決して国際的には通用しない)自分たちのみに通用する内向きの論理を守ることに躍起で、(本質を捉えることよりも誤字脱字の訂正にやっきで)揚げ足取りが好きな日本人の理解の枠を大きく超えたものです。