石川淳「狂風記」
荒れた裾野はたましいの領地。怨霊の国。えらばれた住民マゴは、ゴミの中からシャベルをつかって骨をさがすと、オシハノミコの因縁でヒメの肌に押しつぶされる。千何百年の歴史をその場に巻きかえし、人間の怨霊が食らいついて離れない。因縁の目方は歴史の重み、宿願成就に向けて霊をひきつれ、リグナイトから忍歯組の犬どもが陽根を食らおうと襲いかけるが、ヒメは長野主膳のすがたをみる。
- 作者: 石川淳
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小出しにされていた妖術は、陰陽が対峙する局面で全開となります。嵐となって吹き荒れる思索の大戦争。理屈を跳ねのけるのはボロ傘の力か、地の底を掘り進むシャベルの力か。個々人が持つアイテムが強調され、各方面を代表するスーパースターが決死の戦いを繰り広げます。この試合の勝者は、敗者は。そして、提示されるこの世界の行く末は。
おそらくこれは戦後文学史のなかでも特筆されるべき文学的戦いのひとつだろうと、わたしは思う。(井上ひさし)
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