新美南吉「おじいさんのランプ」

 東一君が倉の隅から持ち出してきた、おじいさんの思い出のランプ・・・それは50年ぐらい前の話である。仕事を探していた十三才の巳之助は、ある日隣町でランプを見つけた。少年の村にはランプなんてなかったため、美しく明かるいランプに見とれ、そして思った。そうだ、文明の遅れた自分の暗い村にこのランプをを売り、村人たちの生活を明かるくしてやろう――。

日本の童話名作選 昭和篇 (講談社文芸文庫)

日本の童話名作選 昭和篇 (講談社文芸文庫)

 「運命」とのたわむれが、自分発見につながるという成長物語。少年はランプを使って商売しようと考えるのですが、移り変わる時代の流れに襲われます。少年はそれを自分の力で乗り越えなければなりません。さまざまな苦悩と逡巡の結果たどり着いたシーンのキレイさは、出色です。
 現在でも新しい形が登場すると、その華々しさに比例して否定の数が増えるものです。童話の形をとっていますが、ここでのメッセージは大人に対しても向けられています。