2004-04-23から1日間の記事一覧

平林たい子「施療室にて」

・・・どのくらい眠っただろうか、腹部の激しい痛みが私を襲ってきた。野獣のような自分のうなり声を冷酷に聞く。陣痛だ。出産後、私は監獄に入れられる。テロの失敗が原因である。午前5時、私は猿のように赤い子を産んだ。だが金持ちが優遇されるこの病院で…

松本清張「或る「小倉日記」伝」

母と暮らす耕作は生まれながら障害があり、身体に向けられる世間の好奇と同情の目を知りながら育った。だが学校ではズバ抜けた秀才で、母子はそこに小さな自信を抱いた。生涯唯一の友人・江南の紹介で、耕作は小倉時代の森鴎外の秘密を知り、鴎外の交友を求…