死に憑かれて放浪を繰り返していたその時、僕はヨーロッパのどこかの都会で「BAR SUICIDE」という酒場を見つけた。「死にたければ、特別のカクテルを出しますよ」。バアテンの言葉に誘われるまま、僕はグラスを口へ運ぶ。隣にいた男が、バアテンが叫び、そし…
アントワープからル・アーブルまではわずか一日足らずの距離なのに、船は濃霧のため、未だ河口にとどまっている。このあたりには数十隻の船がぎっしりとかたまり、幻聴のような鐘の音を響かせあっている。すでに空と水との区別もむつかしく、霧はさまざまな…
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