北条民雄

北条民雄「いのちの初夜」

不治の病を宣告されて以来、尾田は日夜死を考えていたが、考えるほどに死にきれなくなって行く自分を発見するばかりだった。いったい俺は死にたいのだろうか、生きたいのだろうか・・・。しかし、佐柄木という患者は違った。尾田よりも重い症状なのだが、明…

北条民雄「癩を病む青年達」

まだ発症していないため退院の望みを捨てきれなかったが、成瀬のような青年達は驚くべき速さで病院に慣れ、この小さな世界に各々の生活を形作って行くのだった。病院に婦人患者は三十パーセントほどしかいないため、ここでは女は王様で男は下僕である。――成…

北条民雄「間木老人」

収容患者千五百名近く、ここは一つの部落だった。宇津は仕事中に間木老人と会い、その所作のうちに品位や風格を感じ、尊敬を憶えるようになった。だが、老人はらい病と精神病を併発した患者の病棟にいるのですと言ったため、宇津は驚いてしまった。一ヶ月程…