開高健「裸の王様」
太郎には友人がいない。彼は周囲に対して圧迫感を抱き、心の四囲に壁をつくって孤独のなかに住んでいた。彼のスケッチブックは、努力を放棄した類型であった。人間の姿は描かれず、彼の心の不毛を物語っていた・・・。画の先生であるぼくは、子供に技術を教えることはしない。子供の能力を開かせるために、それを覆う破片の山をとりのけてあげるだけだ。
- 作者: 開高健
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1960/06/28
- メディア: 文庫
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映画やテレビや本は既に作られた「結果」であるとし、「ぼく」は子供たちをその元となる動物園や川原に連れて行き、創造(あるいは想像)を行わせます。なるほど、です。それにしても教育とは、いかに時間がかかり、そして、難しいものだろうかと感じました。
また、企業合併のごとく「小さな良質」は「巨大な資本」に吸い上げられますが、それに対する小さな反撃は、『子供の内部を旅行する疲労には耐えられるが、そのうしろにある広大な社会を思うと耐え切れない』といっていた「ぼく」もいつしか成長した証なのでしょう。
子供の精力にはいつものことながらぼくは圧倒される。新しい現実から現実へ彼らはなんおためらいもなくとびうつってゆくのだ。どんな力のむだも彼らは意に介しないのだ。
- 作者: 開高健
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 1960/05
- メディア: 文庫
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