長谷川四郎「張徳義」
橋の警備隊にとらえられた張徳義。彼は半地下に入れられ、日本兵の奴隷として暮らすことになった。馬とともに鞭打たれる激しい労働、残飯を与えられて暮らす日々。古い上官が去り、新しい上官が来たが、彼に対する扱いに変化はない。彼の存在は忘れられていた。それはすでに人間の扱いではなく、橋に備えられた物品としてのものだった。
- 作者: 長谷川四郎
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1990/07/03
- メディア: 文庫
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日本軍に捕えられた、中国苦力の生涯を語ることによって、中国と日本、この二つの民族と二つの国の歴史と運命、さらに、それを越えた人類の運命までを髣髴させるものを蔵しています。人間とはいえない、ひとりの人間のすがたを描き出すことで、これだけ広大な背景を感じさせる短編というものは、めったにありません。(臼井吉見)
- 作者: 小沢信男
- 出版社/メーカー: みすず書房
- 発売日: 2004/06/26
- メディア: 単行本
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