金達寿「富士のみえる村で」
私たち朝鮮人は、被圧迫・差別に抵抗して生きている。いわゆる特殊部落民として生きてきた岩村市太郎もその点は同じである。彼に対する共感が、私たちの心には芽生えていた。ところが、今回の旅行は彼と私たちに、思いがけない悲劇をもたらしたのであった。鋭い心理描写から意外なラストに至るまで、充実した作品。
- 作者: 金達寿,磯貝治良,黒古一夫
- 出版社/メーカー: 勉誠出版
- 発売日: 2006/06/01
- メディア: 単行本
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とにかく岩村市太郎は私たちに向かってたくさんの話したいことをもっている男であった。そしてそれらのことを「あなたたち」、つまり私たち朝鮮人「以外には誰にもいえ」なかったり、あるいはまた親しみなじむことができないというところに、彼の深い問題があった。――
常に蔑視されているものは、また蔑視しようとしたがるものである
そうしてこういうことをしたものは、真に蔑視さるべきである