長谷川四郎

長谷川四郎「鶴」

そこは円形の小部屋で、外に出ているのは機関銃ではなくて、望遠鏡だった。敵陣地見取図には至るところに番号があり、敵がいることを意味していた。しかし望遠鏡からは肉眼では見ることのできないものが、はっきりと見えたのである。朝露のきらめいているゆ…

長谷川四郎「勲章」

この大隊は旧軍隊の秩序をそのまま保持しており、佐藤少佐はシベリヤ天皇として特権的な生活を送っていた。しかし、本人はさほど意識していなかったようだが、彼も所詮捕虜であった。或る日着任してきたロシヤ人将校は、少佐と兵隊たちに権力がいずこにある…

長谷川四郎「張徳義」

橋の警備隊にとらえられた張徳義。彼は半地下に入れられ、日本兵の奴隷として暮らすことになった。馬とともに鞭打たれる激しい労働、残飯を与えられて暮らす日々。古い上官が去り、新しい上官が来たが、彼に対する扱いに変化はない。彼の存在は忘れられてい…