2004-03-22から1日間の記事一覧

牧野信一「酒盗人」

連日連夜の飲み会により、とうとう酒樽が空になった。酒の主・音無家からもらってくるさ!と僕は気軽に請合うが、どうやらもう貸しは作れないらしい。せっかくみんなで貯めた金銭も、立て替え代金以上にはならないようだ。音無の奴め。・・・よし、攻め入ろ…

坂口安吾「オモチャ箱」

異色作家・三枝庄吉の主人公は、常に自分自身である。彼の作品は一種の詩で、夢幻のごとくありながら、即物的な現実性を持っていた。しかし今や――彼は自分を見つめる鬼の目を失っていた。架空の空間に根を張ったため、作品は育たなくなっていた。妻との喧嘩…