おりんはこの冬に楢山に行くことを決めているのである。その山はとても遠くにあるのである。村は食料が乏しいために、家族が多いと冬を越せないのである。でもまだ秋である。この年になっても元気なおりんは、自分の年寄りらしくない姿が恥ずかしかったので…
薄暗い屋根裏部屋に、貧しい詩人の津田三郎が住んでいた。彼は世の中とか人間とかに恐怖と嫌悪を持っていたので、この部屋はその性情に適っていた。机から二歩で窓から外界を眺められ、さらに二歩で寝台へ逃れることが出来るのだ。ところがある朝、三郎は物…
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