壇一雄「降ってきたドン・キホーテ」
一月元旦。変り映えのしない年賀状の中に一通、馬鹿デカイ封筒が混じっていた。これこそは誰あろう、ラ・マンチャの騎士ドン・キホーテ氏からのものだった!どこかの大統領が会見を申し込んできたのとはわけが違う。偉大なる騎士をどのように迎えるか、浴びるほど酒をあおりながら思案しなければならぬ。私は女房の有金全部をかっさらい、街頭へと飛び出した。
- 作者: 檀一雄
- 出版社/メーカー: 沖積舎
- 発売日: 1991/11
- メディア: 単行本
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何、スペイン語?冗談言っちゃいけないぜ。闘牛にあこがれる壇一雄がスペイン語なら、グラナダの土語に迄精通していることを、諸君らは知らないのか?
そう言えば、睡眠という奴は、よく滑る――長い長い、粘土の川岸を持った一筋の流れのようなものである。はい上ろうと、その川岸にたどりつく度に、またズルズルと流れの方に落ちこんでいって――またはい上ろうと岸辺の方によってゆくとまたズルズルと流れの中に滑ってゆく――。
そうして、そのズルズルの最後のあたりがオサラバ人生という奴だろう。