2004-03-04から1日間の記事一覧

梅崎春生「桜島」

対岸は相変わらず同じところから出火しており、もはや消火する気力を失ったようである。確実に敗北と死が迫っている。なぜだ。なぜ、私はここで死ななければならないんだ。日本は私に何をしてくれたのだ。この桜島は私の青春にどういう意味を持つんだ。私は…

田中英光「野狐」

ひとのいう、(たいへんな女)と同棲して、一年あまり、その間に、何度、逃げようと思ったかしれない。彼女はかつて売春婦であった。私は妻と4人の子供を持つが、桂子との関係において、はじめて愛を知ったといっていい。桂子はうそつきで、でたらめで、強欲…