2004-03-09から1日間の記事一覧

織田作之助「世相」

妻には私が書くデカダンでエロチックな小説は嫌われているが、それでも稼ぎが多ければ認められることだろう。思い出の中にも、そこいらにも小説のネタは転がっている。だが、それを書く私のスタイルが昔のままなのだ。変わらなければならない。激変した大阪…

椎名麟三「深尾正治の手記」

全く僕はどうかしてしまったのだ。まるでこの宿に百年もいるような気がするのだ。自分が追われているという切実感もない。ここは永劫の牢獄である。しかも僕はいつまでここにいるのかも判らない。そしてなぜか僕はここの住人との関係がうまくいかないのだ。…