2004-03-13から1日間の記事一覧

林芙美子「晩菊」

老女・きんの元へ、かつて愛した男・田部が訪ねてくることになった。「別れたあの時よりも若やいでいなければならない」――。自分の老いを感じさせては敗北である。たっぷりと時間をかけて、念入りに身支度を整える。わずかな期待を抱きつつ・・・。晩菊・水…

武田泰淳「「愛」のかたち」

肉体に異常な欠陥を持ちコンプレックスに悩む町子は、生活を保障してくれる夫と、1人の女として遇してくれる光雄との間であぶない橋を渡っていた。ところが光雄という男は人間性を持っておらず、感情ではなくテクニックだけで生活する男であったのだ。それで…

田中英光「地下室から」

理論のない同志たちに呆れながらも、私はいつしか共産党のN地区代表にまで上り詰めた。だが、そのポジションから見えたものは、旧体制によって行われた恐喝まがいの行為であった。そして党員たちの利己的な生き方であった。各々が「自分が一番の善人」と信じ…