2004-04-11から1日間の記事一覧

安部公房「魔法のチョーク」

貧しい画家のアルゴン君は、今朝から何も食べていない。ふとポケットに入れた指先は、赤い棒切れにぶつかった。描いたものが全部実物となって、壁から転がり出てくる魔法のチョーク。食べ物の絵をたくさん描いて、信じられない幸福!けれども、気がついた。…

嘉村磯多「七月二十二日の夜」

師の三回忌。挨拶に伺った私は、未亡人と顔面に大ヤケドを負った遺子と会う。「いっそ死んでくれたのなら・・・」と声を絞り、苦悩を浮かべた表情を未亡人は両手で覆い隠した。治療費もない未亡人を前に、私は援助をしかかるが、私にも似た境遇の子供がおり…

椎名麟三「媒酌人」

従妹の夫である伊川民夫が突然我が家に転がり込んできた。聞けば、叔父を殴ったために村から追い出され、妻とは別居し行くあてがなく、東京に行けば仲人をしてくれたおじさんがいるし、そう思ってやって来たという。だが、私は彼とは結婚式の日に一度会った…