2005-07-18から1日間の記事一覧

井伏鱒二「屋根の上のサワン」

猟銃に撃たれて苦しんでいる雁を見つけた私は、丈夫にしてやろうと決心し、さっそく家に連れて帰りました。勘違いして騒ぐ鳥を押さえつけて手術を施し、一安心です。順調に回復してきた人なつこい鳥に、私はこれにサワンという名前をつけました。そして、秋…

井上友一郎「受胎」

漫才師の草八と偶然再会したとき、わたくしたちは上機嫌で飲み、彼は芸界の辛酸についても語ってくれた。そして彼は、せっかく板についてきた漫才師の職を投げ出してまで、浪花節をやりたいというのであった。いったいどういうことだろうか。草八は語りはじ…

丹羽文雄「厭がらせの年齢」

八十六になるうめ女は、家の中で迷って夜中でも助けを呼ぶ。悪意なく、すきを見せると盗みをはたらく。ひがみからか、客の前で「助けてくださいよぅ」とあわれな声を立てる。食事の量は減らず、そもそも食事したことを覚えていない。「ところで孫たちとして…