佐多稲子「キャラメル工場から」

 ひろ子の父親は仕事をしたりしなかったりで、家族を怒鳴り散らして過ごしていた。ある日、彼はひろ子へ向かって、遠い場所にあるキャラメル工場での仕事をつたえた。工場の名が知れていたので、気が向いたにすぎなかった。ひろ子は次の日からしょぼしょぼと通った。夜更けに出発し、13才のひろ子は1人の労働者であった。むろん学校には行けず、ふとしたときに、ひろ子の鼻先からは涙が落ちた。

 家庭におけるフリーター親父の暴君ぶりと、労働者の過酷すぎる労働。2つの日本的な主題がクロスして描かれ、いずれの被害者もひろ子です。現在は、当時と比べると職場環境や労働条件は改善されたはずですが、貨幣価値の差を利用して世界に工場を作ることで「労働者を安く働かせる」という構図は残っています。また、日本の中でも外国人労働者は厳しい生活を強いられており、この作品、英語に翻訳したらいいのにと思います。