2004-03-17から1日間の記事一覧

伊藤整「若い詩人の肖像」

小樽で教師をしていた私は、中央で続々と生れる若い詩人たちに、嫉妬と焦りを感じていた。発表欲が出てきていた私は、詩壇のドングリの末席にでも加わりたかったのである。冬になり、完成した自費出版の詩集を150名ほどの詩人に送ることにした。行為の意味を…

太宰治「ダス・ゲマイネ」

佐野次郎こと私は、シューベルトに化け損ねた狐のような男である馬場と出会った。親しくなったとき、彼は一冊の本を出版しないか、と持ちかけてきた。そうして集まったのは、絢爛たる美貌と貧弱な体を持つ絵描きの佐竹、そして、作家の太宰治という男。走れ…

中島敦「かめれおん日記」

「何?え?カメレオン?え?カメレオンじゃないか。生きてるの?」教師の私は、生徒がもってきたカメレオンを飼うことになった。この動物を前にして、私は熱帯や異国への思いが蘇ってくるのを感じた・・・が、回顧的になるのは衰弱の証拠だ、と人は言う。み…