井伏鱒二「朽助のいる谷間」
谷本朽助(七七歳)の孫のタエトという娘から手紙が来た。「この谷底にダムが出来ることになり、私どもの家は立ち退かなければならなくなりました。けれども、祖父・朽助は反対なのでございます。弁護士でおられるあなたならば(中略)祖父を説き伏せて下さい(後略)」。私はしばらくの間、朽助とタエトが住む家に寝泊りして朽助の説得を試みるが・・・。
- 作者: 井伏鱒二
- 出版社/メーカー: 新潮社
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「おそいから、うちへ帰ろう!」
「なんぼうにも私らは、ここの家の方が好きだります。何処へ寝起きしようとも、私らは私らの勝手ですがな」
「バッド・ボーイは止せ。早く帰ろう!」
「いっそ私らは、今日は新しき闘争とかたらをしているのでがす。心配しなさるなというたら」