西野辰吉「C町でのノート」

 アメリカ軍に雇われた警備員(日本人)が、アメリカ兵の住居の周りにいた怪しい男(日本人)を射殺した。彼は軍のルールに従っただけだというが、基地外での発砲であったため問題が生じたのである。折衝に躍起な日米の軍及び政府関係者、涙する被害者の家族、逮捕された警備員・・・。私はC町に出かけ、関係者から話を聞いた。そして、この事件がはらんでいる問題に気づいたのだった。

 アメリカ軍と日本の警察、そして民衆。かつてこの国にはいびつな構造が存在していました。「アメリカ軍→日本警察:支配・なめる・侮辱」、「日本警察→アメリカ軍:不愉快・反感」、「日本警察→民衆:いい加減・暴力」、「民衆→日本警察:あきらめ」。そんな形が確かにあったのです。それはこの小説を読めば分かります。そして、この形の一部は今現在、沖縄に集中して残されています。

 こいつら連行だの威嚇射撃だのいってやがるが、それは基地のなかでだけ通用することなんだぞ。基地の外へ一足出りゃ、日本の法律というものがちゃんとあるんだ。こんちきしょう…。