福永武彦「退屈な少年」

 十四歳の健二は退屈しきっていた。もちろん面白そうな動物や植物はある。けれどもいったん退屈であると宣言した以上は、何がなんでも退屈でなければならなかったのだ。僕はもう子供じゃない――。退屈で退屈でしかたがない健二少年、看護婦の三沢さん、少年の父・麻生教授、その長男の舜一・・・主役がめまぐるしく変わるストーリー。

廃市/飛ぶ男 (新潮文庫 草 115-3)

廃市/飛ぶ男 (新潮文庫 草 115-3)

 「運命のロシアンルーレット」とでもいうべきコミカルかつ洒落た作品で、主人公がぐるぐると変わりながらストーリーが進んでいきます(読めば分かりますが、この言葉はもうひとつの意味を含んでいます)。
 少年の健二はともかくとして、それ以外の登場人物たちには、それぞれの恋愛に関する「罪の意識」が存在しています。運命は誰のもとに幸福/不幸を落とすのでしょうか?
 よく練られた意外な展開が楽しめます。また、文中のキーワードを再登場させる方法が巧みです。特にラストは最後の1ピースがはまった感じで、「上手い!」と思わず叫んでしまいました。